社長のコラム 今月のヒント

平成27年08月号

着物の前合わせは左前? 右前? 一度で覚える方法とは

花火大会まっさかりという時期です。週末になると浴衣姿の女性を見かけます。暑いのにスーツを着ている私からすると、涼しげな着衣は心をなごませます。ところで、着物の前合わせは左前か右前か?迷うこともありませんか。

着物を着るときの「前」という言葉の意味は、時間が前という意味で先に合わせた方を前と呼びます。着る人本人の右手に持っている右側の衿を先に合わせて、後から左手に持っている左側の衿を合わせるので、右が先⇒右が前⇒右前 ということです。 「上前」というのは、着たときに上にくる(外側にくると同じ意味で、着ている人にとって外側にくる)身頃のことで、左手に持っている方の身頃のことです。「上前」は外側にくる場所なので、振袖や訪問着などは、模様が一番豪華に描かれていいる場所です。この「上前」(上にくる身頃)に続く衿が、当然外側にくるわけで、その前に右手に持っている「下前」が先に体に合わせられています。

このようになったいきさつは、1200年ほども前にさかのぼります。衿合わせが「右前」と統一されたのは、719(養老3)年のことで、それまでは特別の決まりはありませんでした。元正天皇によって「衣服令」が発令され、衿は先に右を合わせる着装法「右衽着装法(うじんちゃくそうほう)」が定められたのです。以来着物のときの衿合わせは「右前」が習わしになって現代に至っています。 逆の左前にするときは、仏式の葬儀で、亡くなった方に着せる着物のときです。その時の着物は経帷子(きょうかたびら)といって、生前とは逆の衿合わせをして、死後の世界へお送りする習わしとなっています。そのため、着物を左前に合わせて着ていると、「早死にする」などといわれ縁起が悪いとされるのです。

着物を着る機会といっても、夏に浴衣をたまに着るだけという方だと、「左前」に着てしまっている!方を見かけることもあります。帯をしてしまうので、もう衿合わせは直しようがありません。迷うことが今後なくなるように、こんな風に覚えておくといいですよ ⇒ 女性の場合はいつもの服の逆の合わせ方で、男性は服と同じ。今後衿合わせに迷うこともなくなるはずです。