社長のコラム 今月のヒント

令和元年7月号

誰かのために…

石垣りんの詩に、昔の女性の家事を詠ったものがあります。その一節に…。
「台所ではいつも正確に 朝昼晩への用意がなされ用意の前にはいつもいくたりかのあたたかい膝や手が並んでいた。ああ その並ぶべきいくたりかの人がなくてどうして女がいそいそと炊事など くり返せたろう」
このごろ、モチベーションとか、やる気とか、仕事の意欲ということが取りざたされます。 ある経営者が、社員に向かって結局仕事は自分のためにするものだ、頑張ったら自分の給料も上がるだろうと言っていました。 でも、ホントにそうかなあ? 自分のために、という考え方だけだと、やがて行き詰る。 だって、子のために命を捧げる母がいる。仕事の完成のために、一生を賭ける男もいる。人は、自分を超えた何かに向かう存在でもあるのでしょうか。

◎垣りん(東京都出身、1920年~2004年)
戦前、戦中、戦後と家族の生活を支え、そのかたわら詩を次々と発表しました。原爆の詩に次 のようなものも…。「1945年8月6日の朝/一瞬にして死んだ25万人の人すべて/いま 在る/あなたの如く 私の如く/やすらかに 美しく 油断していた」