社長のコラム 今月のヒント

令和05年02月号

戻るという考え方

武田鉄矢主演の映画『降りてゆく生き方』がある。武田さん演じる主人公は、日本酒醸造の話を聞き、「発酵」という酒造りの本質に魅了され、エリートサラリーマンに見切りをつけた。「昇ることをやめた人たち」、すなわち戦後の日本人に植え付けられた価値観とは別の視点である。「家の中は自分のものだが、外側はみんなのもの。外観は町並みの景観になるんだ」。人間が作物を作っているんじゃない。土と水と太陽が育てているんだ。発酵と腐敗は同じこと。人間にとって有害だと腐敗、有益だと発酵。良くなるために悪くなるってことがあることを忘れない。映画のタイトル『降りてゆく』とは、「落ちていく」とか「朽ちていく」という意味ではなく、登山が下山することで完結するように、「元いた場所に戻る」ということなのかもしれない。