社長のコラム 今月のヒント

令和04年02月号

悪口は 受け取らないと 相手の元に戻る

あるところに、お釈迦様が多くの人たちから尊敬される姿を見て、ひがんでいる男がいました。「どうして、あんな男がみんなの尊敬を集めるのだ。いまいましい」。そこで、男は散歩のルートで待ち伏せして、群集の中で口汚くお釈迦様をののしってやることにしました。「お釈迦の野郎、きっと、おれに悪口を言われたら、汚い言葉で言い返してくるだろう。その様子を人々が見たら、あいつの人気なんて、アッという間に崩れるに違いない」。
 そして、その日が来ました。男は、お釈迦様の前に立ちはだかって、ひどい言葉を投げかけます。お釈迦様は、ただ黙って、その男の言葉を聞いておられました。弟子たちはくやしい気持ちで、「あんなひどいことを言わせておいていいのですか?」とお釈迦様にたずねました。それでも、お釈迦様は一言も言い返すことなく、黙ってその男の悪態を聞いていました。男は、一方的にお釈迦様の悪口を言い続けて疲れたのか、しばらく後、その場にへたりこんでしまいました。
 どんな悪口を言っても、お釈迦様は一言も言い返さないので、なんだか虚しくなってしまったのです。その様子を見て、お釈迦様は、静かにその男にたずねました。
 「もし他人に贈り物をしようとして、その相手が受け取らなかった時、その贈り物は一体誰のものだろうか」。こう聞かれた男は、突っぱねるように言いました。「そりゃ、言うまでもない。相手が受け取らなかったら贈ろうとした者のものだろう。わかりきったことを聞くな」。男はそう答えてからすぐに、「あっ」と気づきました。お釈迦様は静かにこう続けられました。

「そうだよ。今、あなたは私のことをひどくののしった。でも、私はそのののしりを少しも受け取らなかった。だから、あなたが言ったことはすべて、あなたが受け取ることになるんだよ」。